「退職金って、税金がかかるんでしょ?」
「受け取り方がいろいろあるって聞いたけど…」
「普通に受け取ると、損するかもしれないって本当?」
夏休みになり、職員室での雑談も日頃より多め。
ベテランの先生方のこういう話がぽつぽつ耳に入ってきます。
でも、何から考えればいいのかわからない。
先にお伝えすると、事前に考えておいたほうがいいことは、あります。
ただ、そんなに複雑でもないし、こわい話でもありません。
この記事では、「退職金を受け取るまでに、考えておくとよいこと」を整理します。
まずは、ひと安心。
公務員の退職金は、”勤続年数”や”退職の理由”にしたがって、規程どおりに計算されます。
受け取り方も、一時金でまとめて支給されるのが原則です。
つまり、「受け取り方を間違えて退職金が減る」ということは、起きません。
では、事前に考えておくべきこととは何か?
論点は、大きく4つだと思っています。
- 論点① 退職金の「非課税の枠」を知る
論点② 「年金払い退職給付」をどう受け取るか
論点③ 事実上の退職金”iDeCo”を受け取る「時期」をどうするか
論点④ 60歳以降の働き方と、退職金を受け取る「タイミング」
論点1|退職金の「非課税の枠」を知る
退職金の税金は、お給料とは別枠で計算されます。
でも、退職金がまるまる全部税金の対象になるわけではありません。



こんな感じで…
まず、退職金から”この部分は税金かけないよ(控除)”という額を引き算します。
ここで引く金額は、勤めた年数が長いほど大きくなります。
- 勤続20年まで … 1年あたり40万円
- 20年を超えた分 … 1年あたり70万円
勤続10年なら400万円。
勤続25年なら1,150万円
勤続35年なら1,850万円。
ここまでは、税金がかかりません。
さらに、退職金がこの控除額より多くてはみ出した場合も、その半分しか課税対象になりません。
新卒から定年まで勤め上げた方の場合、退職金の多くがこの枠に収まるか、はみ出してもわずか、というケースは少なくありません。
ですので、最初に確かめるのは「税金が心配」ではなく、
「自分の控除枠はいくらで、退職金はそれに対してどのくらいか」ということ。できないのです。
退職金の額について、福岡市の先生向けの「退職金シミュレーター」を用意しました。
ぜひご活用ください!
※知っておくと安心ポイント
退職の際は、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しましょう。
提出しないと控除が使われず、一律20.42%が引かれてしまいます。
後で確定申告をすることで還付を受けることはできますが、手続きが面倒です。
たいてい職場から案内がありますが、頭の片隅に置いておいてください。

論点2|「年金払い退職給付」をどう受け取るか
ここが、公務員の方に特有のために、見落とされやすいポイント。
平成27年にできた年金払い退職給付は、退職金とは別の制度です。
終身部分と有期部分の2階建てになっていて、このうち有期退職年金は「20年でもらう」「10年でもらう」「一時金でまとめてもらう」の3つから選べます。
選ぶのは、請求手続きのとき。
ここは受け取り方を自分で決めなければいけません。
どの受け取り方にするかの判断材料は、”退職から年金受給が始まるまでの収入の谷をどう埋めるか”、”他の資産はどうなっているか”、”税金はどうなりそうか”
このあたりを並べてみて判断することになります。
論点3|事実上の退職金”iDeCo”を受け取る「時期」
iDeCoをされている方(特に積立額が大きい方)は、ここがいちばん大きな論点になります。
退職金とiDeCoの一時金を近い時期に受け取ると、さきほどの控除(退職所得控除)が二重に使えないようなっています。
以前は、5年間空けることで退職所得控除を二重に使えてお得だったのですが…
2026年から、この期間が5年から10年に延びました。
これまでは「iDeCoを60歳で、退職金を65歳で」と5年空ける設計が有効でした。
これからは、10年空けないと枠をフルに使えません。
定年が近い方ほど、この改正の影響を直接受けます。
受け取る順番と時期を組み直す、iDeCoを年金の形で受け取る——方向性はいくつかありますが、
どれがよいかは枠の残り具合、退職後の暮らし方、退職金とiDeCoの額など、複数の条件を並べて考える必要があります。
「これが正解」と一律には言えないところです。
退職が近く、iDeCoの積立額がある程度まとまった金額になっている方は、受け取り方について専門家に相談してみた方がいいと思います。

論点4|60歳からの働き方と、退職金を受け取る「タイミング」
定年は2年ごとに1歳ずつ引き上げられ、2031年度に65歳になります。
60歳以降の基本給は当分のあいだ7割水準になりますが、退職金については減額前の額を反映する仕組み(ピーク時特例)があるので、定年が伸びたことによる退職金の目減りは起きないようになっています。
ただ、定年がのびたことで、60歳で退職、63歳で退職、65歳で退職など、退職金を受け取る”タイミング”の選択肢が増えたとも言えます。
論点3と直結しますので、働き方と受け取り方は、セットで考える必要があります。
まずは、この3つから
教員時代、宿題をしてこない子に「大人になったら困るよ」と正論で伝えても、宿題をしてくるようになったことはありませんでした。
それはそうです。
宿題をしない背景は人それぞれですから。
学習理解度はどうか、仮定環境はどうか。
まず現状を知らないと、手立ては打てません。
お金の話も、まったく同じだと思っています。
- 自分の退職所得控除の枠と、退職金の見込額
- 年金払い退職給付の有期部分をどう受け取るか
- iDeCoなど、ほかに一時金があるか
この3つが手元にそろえば、「自分の場合、何が論点で、何が論点でないか」がはっきりします。
そこまで来ると、多くの方が「思ったより単純だった」とおっしゃいます。
逆に、この3つを知らないまま「損しない方法」を探しても、判断のしようがないのです。
退職金の見込額は職場の事務の先生に、年金払い退職給付は共済組合に確認できます。
まずは、そこから。
数字を並べてみて、選択肢の比較で迷われたときは、そのタイミングでお声かけください。
最適解をお伝えするというより、一緒に探す時間になればと思っています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度の詳細や個別の取扱いは、所属先・共済組合等でご確認ください。





