
公立学校の先生によくご質問いただくものの一つに、”退職金”があります。
諸先輩方に
「退職金いくらもらいました!?」
と聞いて回れば解決するのでしょうが、そうもいかないですよね。
そんなこともあって、退職金はブラックボックス化しています。
今回の記事は、「実際のところ退職金っていくらもらえるの?」という悩みに答えるためのものです。
退職金の額は、先生方の職歴によって大きく変わるので、一概にいくらとは言えないんです…
そこで、先生方の退職金がどのように決まるのか、計算の仕組みをできるだけわかりやすく解説します。
※この記事は、福岡市の公立学校の先生向けに書いたものです。福岡市は政令指定都市のため、職員の退職金は国の制度をそのまま使うのではなく、福岡市が独自に定める「福岡市職員退職手当支給条例」にもとづいて計算されることになっています。
この記事では、教員の退職金が決まる仕組みを解説し、勤続年数別の早見表と自動計算シミュレーター、さらに税引き後の手取りの目安までまとめています。
※ 計算は福岡市職員退職手当支給条例にもとづいています。他の自治体でも仕組みの考え方は共通ですが、具体的な数値は各自治体の条例をご確認ください。
退職金の基本的な計算式
退職金の計算式は、大きく見るととてもシンプルです。基本的には次の式で成り立っています。
退職金 = 基本額 + 調整額
「基本額」が退職金の土台となる部分、「調整額」が役職などに応じて上乗せされる部分です。
それぞれがどのように決まるのか、順番に見ていきましょう。
1. 基本額の決まり方

基本額は、退職する日の「給料月額」と、勤続年数などに応じた「支給率」を掛け合わせて計算します。
基本額 = 退職日の給料月額 × 支給率
退職日の給料月額とは、退職する時点での基本給のことです。各種手当は含みません。
支給率は、「勤続年数」と「退職理由(定年退職か、自己都合退職かなど)」によって決まります。
イメージとしては、1年勤めるごとに退職金の「支給率」が積み立てられていく貯金箱のようなものです。
ただし、1年あたりに積み立てられる量は一定ではなく、勤続年数の長さによって変わります。
最初の10年ほどは少しずつ、その後の中堅〜ベテランの時期がいちばん手厚く積み立てられ、勤続35年あたりで上限に達します。
こうして1年ごとに積み立てたすべて合計したものが「支給率」になる、という仕組みです。
大切なポイントは次の2つです。
ポイント①
長く勤めるほど支給率は上がります。定年退職(勤続35年以上)の場合、支給率は最大で「約47.7か月分」に達します。たとえば給料月額が40万円であれば、基本額だけでおよそ1,900万円になる計算です。
ポイント②
第二に、自己都合退職の場合は、支給率が定年退職より低くなります。たとえば同じ勤続25年でも、定年退職なら約33.3か月分なのに対し、自己都合退職では約28.0か月分にとどまります。勤続年数が短いうちに自己都合で辞めると、この差はさらに大きくなります。「あと少しで支給率の区分が変わる」というタイミングもあるため、退職時期は支給率に意外と影響します。
勤続年数別・支給率の早見表
| 勤続年数 | 定年・勧奨退職 | 自己都合退職 | 基本額の目安 (月額40万円・定年) |
|---|---|---|---|
| 5年 | 5.23か月 | 2.51か月 | 約209万円 |
| 10年 | 10.46か月 | 5.02か月 | 約418万円 |
| 15年 | 16.22か月 | 10.38か月 | 約649万円 |
| 20年 | 24.59か月 | 19.67か月 | 約984万円 |
| 25年 | 33.27か月 | 28.04か月 | 約1,331万円 |
| 30年 | 40.80か月 | 34.74か月 | 約1,632万円 |
| 35年 | 47.71か月 | 39.76か月 | 約1,908万円 |
※ 支給率は上の簡易シミュレーターと同じ計算にもとづく概算です。勤続35年で上限(約47.71か月)に達します。
※ 20年と25年、25年と30年の差にご注目ください。定年か自己都合かで、同じ勤続年数でも数百万円変わります。
2. 調整額とは?

調整額は、教員としてのキャリアの中で「どのような役職を、どのくらいの期間務めたか」を評価して上乗せされる金額です。
具体的には、在職期間のうち調整月額が高い月から60か月分(5年分)を合計して計算します。
調整月額は職務の級ごとに条例で定められており、校長・教頭・主幹教諭といった責任あるポジションほど高く設定されています。つまり、管理職などを長く務めた先生ほど、この調整額が多くなる仕組みです。
なお、自己都合退職で勤続年数が短い場合には注意が必要です。勤続9年以下では調整額は支給されず、勤続10年以上24年以下の場合は半額になります。
役職別・調整額の目安
| 退職前5年間の主な職 | 調整月額 | 調整額(60か月分) |
|---|---|---|
| 校長 など | 59,550円 | 3,573,000円 |
| 教頭・副校長 など | 54,150円 | 3,249,000円 |
| 主幹教諭 など | 43,350円 | 2,601,000円 |
| 教諭(管理職経験なし) | 32,500円 | 1,950,000円 |
※ 校長と教諭では、調整額だけで約160万円の差があります。
※ 自己都合退職の場合、勤続9年以下は調整額なし、勤続10〜24年は半額になります。
シミュレーターを作ってみたので、給料月額(基本給のみ)や勤続年数、退職理由、経験した役職を設定して、基本額と調整額がどのように組み合わさるのか、おおよその退職金の金額感をみてみてください。
退職金 簡易シミュレーター
福岡市職員退職手当支給条例にもとづく概算です(数値を入力すると自動計算)
※ 各種手当を含まない「給料表上の月額(基本給)」を入力してください
※ 調整額は「職務の級」ごとの調整月額(条例第9条の4)を、直近60か月分として概算したものです。実際の区分は規則で定められます。
基本額: 円
調整額: 円
概算合計: 円
※ 表示額は支給前(税引き前)の概算です。実際の手取りは、退職所得控除を踏まえた所得税・住民税が差し引かれた額になります。
※ 福岡市職員退職手当支給条例にもとづく簡易計算です。早期退職特例や給料月額の改定など個別事情は反映していません。正確な金額は勤務先・教育委員会へご確認ください。
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退職金には税金がかかる点にも注意

退職金簡易シミュレーターで表示されるのは、税金が引かれる前の金額です。
実際に受け取る際には、退職金にも所得税・住民税がかかります。
ただし退職金は、長年の勤労に対する報酬という性格から、税制上とても優遇されています。
「退職所得控除」という大きな控除があり、勤続20年を超える期間については1年あたり70万円が控除されるなど、税負担はかなり軽くなるように設計されています。
退職所得控除・税金シミュレーター
勤続年数で控除額が、退職金額を入れると税金の目安が分かります
※ 1年未満の端数は1年に切り上げて入力してください
※ 退職金シミュレーターで出た「概算合計」を入れると、税引き後の手取りの目安が分かります
退職所得控除額: 円
※ 「退職所得の受給に関する申告書」を提出した一般的なケースの概算です。役員等で勤続5年以下の場合や、同じ年に複数の退職金を受け取る場合などは計算が異なります。正確な金額は勤務先・税務署等にご確認ください。
税制上優遇されているとはいえ、手取り額は額面より少なくなるため、ライフプランを考える際はこの点も頭に入れておきましょう。
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まとめ:セカンドライフに向けて
「基本額」と「調整額」の組み合わせで退職金が決まることがわかると、ご自身が将来受け取れる金額が少しイメージしやすくなったのではないでしょうか。
退職金はセカンドライフを支える大切な資金です。
現在の給与明細やねんきん定期便とあわせて、一度ご自身の資産状況を確認し、将来に向けたマネープランを立ててみることをおすすめします。
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※ 本記事は令和8年6月現在の福岡市職員退職手当支給条例(第3条〜第5条、第9条、第9条の4、附則第4項など)にもとづく一般的な解説です。早期退職特例や給料月額の改定など個別の事情によって金額は変わります。正確な退職手当の額については、勤務先や福岡市教育委員会にご確認ください。
参考資料
福岡市職員退職手当支給条例:https://www.city.fukuoka.lg.jp/d1w_reiki/reiki_honbun/q003RG00000291.html
福岡市職員退職手当支給条例施行規則:https://www.city.fukuoka.lg.jp/d1w_reiki/reiki_honbun/q003RG00000292.html



