
公立学校の先生によくご質問いただくものの一つに、”退職金”があります。
諸先輩方に
「退職金いくらもらいました!?」
と聞いて回れば解決するのでしょうが、そうもいかないですよね。
そんなこともあって、退職金はブラックボックス化しています。
今回の記事は、「実際のところ退職金っていくらもらえるの?」という悩みに答えるためのものです。
退職金の額は、先生方の職歴によって大きく変わるので、一概にいくらとは言えないんです…
そこで、先生方の退職金がどのように決まるのか、計算の仕組みをできるだけわかりやすく解説します。
退職金は、あと何年働くか、いつ辞めるかで大きく変わります。それなのに、自分がいくら受け取れるのかを知る手段が、ほとんどありません。
このページのシミュレーターは、47都道府県と20の政令指定都市――全国67の自治体に対応しています。お勤めの自治体を選んで、給料月額と勤続年数を入れるだけで、退職手当の概算がわかります。
支給率は67自治体すべて、実際に公表資料と条例をあたって確認しました。どこまでが確認した数値で、どこからが推定なのかも、画面上に表示しています。(たとえば福岡市の場合は、福岡市が独自に定める「福岡市職員退職手当支給条例」にもとづいて計算されます。)
2026年9月4日更新:福岡市版の記事を、全国47都道府県+20政令指定都市に対応した内容にリライトしました。
この記事では、教員の退職金が決まる仕組みを解説し、勤続年数別の早見表と自動計算シミュレーター、さらに税引き後の手取りの目安までまとめています。
※ 支給率は全国67自治体(47都道府県+20政令指定都市)すべてを実際に確認しています。たとえば福岡市の場合は、福岡市職員退職手当支給条例にもとづきます。
退職金の基本的な計算式
退職金の計算式は、大きく見るととてもシンプルです。基本的には次の式で成り立っています。
退職金 = 基本額 + 調整額
「基本額」が退職金の土台となる部分、「調整額」が役職などに応じて上乗せされる部分です。
それぞれがどのように決まるのか、順番に見ていきましょう。
1. 基本額の決まり方

基本額は、退職する日の「給料月額」と、勤続年数などに応じた「支給率」を掛け合わせて計算します。
基本額 = 退職日の給料月額 × 支給率
退職日の給料月額とは、退職する時点での基本給のことです。各種手当は含みません。
支給率は、「勤続年数」と「退職理由(定年退職か、自己都合退職かなど)」によって決まります。
イメージとしては、1年勤めるごとに退職金の「支給率」が積み立てられていく貯金箱のようなものです。
ただし、1年あたりに積み立てられる量は一定ではなく、勤続年数の長さによって変わります。
最初の10年ほどは少しずつ、その後の中堅〜ベテランの時期がいちばん手厚く積み立てられ、勤続35年あたりで上限に達します。
こうして1年ごとに積み立てたすべて合計したものが「支給率」になる、という仕組みです。
大切なポイントは次の2つです。
ポイント①
長く勤めるほど支給率は上がります。定年退職(勤続35年以上)の場合、支給率は最大で「約47.7か月分」に達します。たとえば給料月額が40万円であれば、基本額だけでおよそ1,900万円になる計算です。
ポイント②
第二に、自己都合退職の場合は、支給率が定年退職より低くなります。たとえば同じ勤続25年でも、定年退職なら約33.3か月分なのに対し、自己都合退職では約28.0か月分にとどまります。勤続年数が短いうちに自己都合で辞めると、この差はさらに大きくなります。「あと少しで支給率の区分が変わる」というタイミングもあるため、退職時期は支給率に意外と影響します。
勤続年数別・支給率の早見表
| 勤続年数 | 定年・勧奨退職 | 自己都合退職 | 基本額の目安 (月額40万円・定年) |
|---|---|---|---|
| 5年 | 5.23か月 | 2.51か月 | 約209万円 |
| 10年 | 10.46か月 | 5.02か月 | 約418万円 |
| 15年 | 16.22か月 | 10.38か月 | 約649万円 |
| 20年 | 24.59か月 | 19.67か月 | 約984万円 |
| 25年 | 33.27か月 | 28.04か月 | 約1,331万円 |
| 30年 | 40.80か月 | 34.74か月 | 約1,632万円 |
| 35年 | 47.71か月 | 39.76か月 | 約1,908万円 |
※ 支給率は上の簡易シミュレーターと同じ計算にもとづく概算です。勤続35年で上限(約47.71か月)に達します。
※ 20年と25年、25年と30年の差にご注目ください。定年か自己都合かで、同じ勤続年数でも数百万円変わります。
※ この表は「国基準」の支給率です。67自治体中63団体はこの基準にもとづきます。東京都・横浜市・名古屋市・北九州市の4団体は独自方式のため、下のシミュレーターでご確認ください。
2. 調整額とは?

調整額は、教員としてのキャリアの中で「どのような役職を、どのくらいの期間務めたか」を評価して上乗せされる金額です。
具体的には、在職期間のうち調整月額が高い月から60か月分(5年分)を合計して計算します。
調整月額は職務の級ごとに条例で定められており、校長・教頭・主幹教諭といった責任あるポジションほど高く設定されています。つまり、管理職などを長く務めた先生ほど、この調整額が多くなる仕組みです。
なお、自己都合退職で勤続年数が短い場合には注意が必要です。勤続9年以下では調整額は支給されず、勤続10年以上24年以下の場合は半額になります。
役職別・調整額の目安
| 退職前5年間の主な職 | 調整月額 | 調整額(60か月分) |
|---|---|---|
| 校長 など | 59,550円 | 3,573,000円 |
| 教頭・副校長 など | 54,150円 | 3,249,000円 |
| 主幹教諭 など | 43,350円 | 2,601,000円 |
| 教諭(管理職経験なし) | 32,500円 | 1,950,000円 |
※ 校長と教諭では、調整額だけで約160万円の差があります。
※ 自己都合退職の場合、勤続9年以下は調整額なし、勤続10〜24年は半額になります。
※ 上の金額は福岡市の例です。調整額は自治体によって異なり、たとえば教頭の場合、福岡市54,150円に対し和歌山県では27,100円と、倍近い差があります(詳しくは下の「この計算の根拠」)。
シミュレーターを作ってみたので、給料月額(基本給のみ)や勤続年数、退職理由、経験した役職を設定して、基本額と調整額がどのように組み合わさるのか、おおよその退職金の金額感をみてみてください。
退職金シミュレーターを使ってみる
お勤めの自治体・給料月額・勤続年数を入れるだけで、退職手当の概算がわかります。
退職所得控除・税金シミュレーターも同じページにあります。
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この計算の根拠 ― 全67自治体を調べた記録
退職手当の計算式は「基本額 + 調整額」です。基本額は給料月額 × 支給率 × 調整率、調整額は職務の級ごとに決まる「調整月額」の上位60か月分。自治体によって差が出るのは、このうち支給率と調整額の2か所です。
このシミュレーターを全国の先生に使っていただくため、47都道府県と20の政令指定都市――合計67団体の制度を、実際に調べました。どこまでが確認した数値で、どこからが推定なのかを、はっきりさせておきたかったからです。
支給率:67団体すべて確認しました
すべての自治体が、総務省の統一様式で「給与・定員管理等について」を公表しています。その「退職手当」欄に、勤続20年・25年・35年・最高限度の支給率が、自己都合と勧奨・定年の両方で載っています。これを1団体ずつ確認し、公表資料で取れなかった団体は各自治体の例規集で退職手当条例の条文にあたりました。
結果は、63団体が国基準、独自方式は4団体だけでした。
| 自治体 | 国基準との違い |
|---|---|
| 東京都 | 最高支給率が43.0か月(国は47.709か月)。調整額も240か月のポイント制で別体系 |
| 横浜市 | 勤続20年・25年の定年退職が国より手厚い。自己都合は国より低い |
| 名古屋市 | 国より約0.085%高い。勤続25年で実額約3万円の差 |
| 北九州市 | 勤続20年・25年の定年退職が国より手厚い |
都道府県は47団体中46団体が国基準で、独自なのは東京都だけ。政令指定都市は20団体中17団体が国基準でした。県より市のほうが独自色が強いという結果です。
調べる途中で、一度まちがえました
ある県で国基準と違う支給率が出てきて、「例外を見つけた」と判断しかけました。しかし確認し直すと、拾っていたのは平成25年時点の資料でした。平成30年の制度改正より前の数値で、現行の値ではありません。
気づいたあと、それまでに確認した団体をすべて現行資料で確認し直しています。古い早見表が検索で上位に出てくることは実際にあるので、年度の確認は欠かせません。
調整額:15団体は確認済み、52団体は推定値です
調整月額の金額そのものは全国共通のはしご(95,400円/78,750円/70,400円/65,000円/59,550円/54,150円/43,350円/32,500円/27,100円/21,700円/0円)から選ばれます。ただしどの役職にどの金額が当たるかは、各自治体の人事委員会規則で決まっていて、統一的には公表されていません。
公立学校共済組合の支部資料、県教育委員会の福利厚生ページ、教職員専用の退職手当条例、例規集の体系索引、教職員組合のハンドブック――7種類の経路を試して、15団体で実際の金額を確認できました。
確認できた15団体を並べると、同じ役職でも金額が大きく違います。
| 自治体 | 校長 | 教頭・副校長 | 教諭 |
|---|---|---|---|
| 大阪府 | 65,000〜59,550円 | 54,150〜43,350円 | 43,350〜27,100円 |
| さいたま市 | 59,550円 | 54,150円 | 43,350〜27,100円 |
| 福岡市 | 59,550円 | 54,150円 | 32,500円 |
| 神戸市 | 54,150円 | 43,350円 | 27,100円 |
| 和歌山県 | 59,550〜43,350円 | 32,500〜27,100円 | 27,100〜0円 |
| 横浜市 | 54,150円 | 32,500円 | 21,700円〜0円 |
教頭で比べると、福岡市の54,150円と和歌山県の27,100円で倍の開きがあります。60か月分では160万円の差です。理由は、各自治体の教育職給料表の級構成そのものが違うためです。
残る52団体は、確認できた15団体の中央値(校長54,150円/教頭43,350円/主幹教諭32,500円/教諭32,500円)を推定値として使っています。この場合、シミュレーターの画面に「推定値」と表示されます。実際には27,100円から65,000円の幅があるため、目安としてご覧ください。
「支給率が低い=損」ではありません
横浜市は調整額が全体的に低い一方で、支給率は国基準より高い団体でした。支給率で厚く、調整額で薄いという配分です。どちらか一方だけを見て有利・不利は判断できません。
調整額の「60か月分」は、退職直前の60か月ではありません
ここは誤解されやすいところです。群馬県教育委員会の資料に、はっきり書かれています。
調整月額のうちその額が最も多いものから60月分を合計した額となります。(退職直近60月分や、退職月の調整月額の60倍ではありません。)
つまり「校長の調整月額 × 60か月」という計算は、厳密には誤りです。在職中の全期間から金額の高い上位60か月を拾うので、校長歴が3年の方は「校長として36か月+教頭として24か月」の合計になります。このシミュレーターで「その職に就いていた年数」を選んでいただくのは、この点を反映するためです。
東京都だけは、退職事由による区別がありません
東京都の条例(職員の退職手当に関する条例 第6条)を読むと、支給率は勤続年数の区分だけで決まり、自己都合と定年の区別がそもそもありません。同条第2項で上限が給料月額の43か月分と定められています。
| 自己都合・勤続35年 | 定年・勧奨・勤続35年 | |
|---|---|---|
| 国基準(63団体) | 39.758か月 | 47.709か月 |
| 東京都 | 43.0か月 | 43.0か月 |
東京都の自己都合は国基準より高く、定年は国基準より低いという構造です。「自己都合だと大幅に減る」という一般的な説明は、東京都には当てはまりません。
この計算の限界
- 調整額の52団体は推定値であり、実際の金額とは異なる可能性があります
- 「任命権者が人事委員会と協議して定める」という裁量条項がある団体は、条文を読んでも金額が一意に決まりません。その場合は中位の値を採用しています
- 独自方式の4団体は、公表資料に勤続20年・25年・35年の3点しか載っていないため、その間の年数は国基準のカーブを3点で補正した推計値です
- 早期退職特例による給料月額の加算、給料の調整額、経過措置による保障は反映していません
- 制度は毎年改正されうるため、この記録は2026年9月時点のものです
正確な金額は、必ずお勤めの自治体・教育委員会にご確認ください。このシミュレーターは、確認する前に「だいたいどのくらいか」をつかむためのものです。
退職金には税金がかかる点にも注意

退職金簡易シミュレーターで表示されるのは、税金が引かれる前の金額です。
実際に受け取る際には、退職金にも所得税・住民税がかかります。
ただし退職金は、長年の勤労に対する報酬という性格から、税制上とても優遇されています。
「退職所得控除」という大きな控除があり、勤続20年を超える期間については1年あたり70万円が控除されるなど、税負担はかなり軽くなるように設計されています。
①の退職金シミュレーターで出た「概算合計」を、同じページの「②退職所得控除・税金シミュレーター」に入れると、税引き後の手取りの目安がわかります。
税制上優遇されているとはいえ、手取り額は額面より少なくなるため、ライフプランを考える際はこの点も頭に入れておきましょう。
「うちの場合はどうなんだろう?」と思ったら
ご家庭の状況によって、備え方は変わります。
まずは話してみるところから、で大丈夫です。
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よくある質問
教員の退職金は、平均でいくらぐらいですか?
総務省の令和6年調査では、教育公務員の定年退職の平均支給額は、自治体によっておよそ2,000万円〜2,400万円です。最も高いのは愛知県と岡山市の約2,381万円、最も低いのは大阪市の約2,006万円でした。このシミュレーターでは、自治体を選ぶとその自治体の実際の平均額と、あなたの概算を比べて表示します。
自己都合で辞めると、どれくらい減りますか?
国基準の63団体では、勤続35年の場合で支給率が47.709か月分から39.758か月分に下がります。給料月額40万円なら、およそ318万円の差です。加えて調整額も、勤続10〜24年なら半額、9年以下なら支給されません。ただし東京都には自己都合と定年の区別がなく、どちらも43.0か月分です。
調整額の「60か月分」とは、退職前の5年間のことですか?
いいえ。在職期間中の各月に、その月の職に応じた調整月額を割り当て、金額の高いほうから60か月分を合計します。退職直前の60か月ではありません。校長を3年務めて退職した方は「校長として36か月+教頭として24か月」の合計になります。
私が働いている自治体の金額は、確認済みですか?
支給率は67自治体すべて確認済みです。調整額は15自治体で規則を確認しており、それ以外は推定値です。自治体を選ぶと、シミュレーターの画面に「確認済み」か「推定値」かが表示されます。
私立学校の教員でも使えますか?
使えません。このシミュレーターは公立学校の教員(地方公務員)向けです。私立学校の退職金は、各学校法人の規程や私学共済の制度によるため、計算の仕組みが異なります。
退職金には税金がかかりますか?
かかります。ただし退職所得控除があり、勤続20年を超える部分は1年あたり70万円が控除されます。勤続35年なら控除額は1,850万円です。控除後の金額をさらに2分の1にしたものが課税対象になるため、多くの場合、実際の税負担はそれほど大きくありません。このページの「退職所得控除・税金シミュレーター」で手取りの目安を確認できます。
まとめ:セカンドライフに向けて
「基本額」と「調整額」の組み合わせで退職金が決まることがわかると、ご自身が将来受け取れる金額が少しイメージしやすくなったのではないでしょうか。
退職金はセカンドライフを支える大切な資金です。
現在の給与明細やねんきん定期便とあわせて、一度ご自身の資産状況を確認し、将来に向けたマネープランを立ててみることをおすすめします。
※ 本記事は2026年9月現在の情報にもとづく一般的な解説です。支給率は全国67自治体(47都道府県+20政令指定都市)を実際に確認しており、確認の範囲と方法は「この計算の根拠」にまとめています。早期退職特例や給料月額の改定など個別の事情によって金額は変わります。正確な退職手当の額については、必ずお勤めの自治体・教育委員会にご確認ください。
参考資料(たとえば福岡市の場合)
福岡市職員退職手当支給条例:https://www.city.fukuoka.lg.jp/d1w_reiki/reiki_honbun/q003RG00000291.html
福岡市職員退職手当支給条例施行規則:https://www.city.fukuoka.lg.jp/d1w_reiki/reiki_honbun/q003RG00000292.html



